大阪家庭裁判所 昭和39年(家)3598号 審判 1965年3月11日
申立人 木村幸子(仮名)
被相続人 亡田口時男(仮名)
主文
被相続人亡田口時男の別紙目録記載の相続財産を申立人木村幸子に分与する。
理由
申立人は主文同旨の審判を求めた。
よつて調査したところによれば、被相続人は大正七年一二月二〇日横山サトと婚姻し双方間に子がなかつたところ、妻サトの妹ヒサがその夫木村芳助に死別し残された幼児申立人(大正九年一二月一三日生)の処置に困窮していたのをみかねて申立人を一時預り養育していたが、上記ヒサは間もなく再婚し申立人を顧りみなかつたため爾後被相続人夫婦が申立人を養育するに至つた。申立人は生来虚弱な体質のため高等小学校を中退し病床に就くこともしばしばで、時に挺身隊や工場などに就労しても十分な作業はできず、現在も脊髄性筋無力症及び脳動脈硬化症で重症な状態にある。被相続人は昭和二二年四月一〇日妻サトに先立たれたが、サトの生前は勿論同人の死亡後も申立人を自己の子同様慈しみ、菓子商、紙器工業、日雇等の収入によりよく申立人を看護してきたが、昭和三六年三月三日数日前に遭遇した交通事故による傷害のため死亡した。被相続人死亡前申立人は同人を幼時は実父と信じ、成長後は養父として慕い、被相続人もまた申立人を事実上の養女として、互に過去三〇有余年間共同生活により苦楽を共にしてきたものであることなどの事実を認めることができる。叙上説示の事実関係によれば本件申立は相当であるから、民法第九五八条の三第一項に則り主文のとおり審判する。
(家事審判官 寺沢光子)
目録省略